シェルコードバン
シェルコードバンとは…。その名前の由来から、特徴や魅力、メンテナンス方法までを解説。
革好きの方なら、必ずと言っていいほど気になる「シェルコードバン」。 靴や、財布などの革小物などに使用され、世界中に多くのファンをもつ革です。 ここでは、シェルコードバンの名前の由来から、製造方法、特徴と魅力、最適なメンテナンス方法などをご紹介。 一般のコードバンとの違いを含め、「シェルコードバンについて知りたい」という方は、ぜひご覧ください。
シェルコードバンとは、ホーウィン社の登録商標です。
一般にコードバンとは、農耕馬の臀部(お尻)にある高密度な層(コードバン層)を削り出して作られる革を指しますが、「シェルコードバン」は、アメリカのシカゴにある老舗タンナーホーウィン社(HORWEEN)の登録商標です。 ホーウィン社の熟練した職人によって時間をかけて鞣された革は、通常のコードバンに比べ、重厚に光る艶があり、その光沢が貝(シェル)のように独特な美しい輝きを持つことから、この名前を付けたと言われています(諸説あり)。 非常に手間をかけて製造されるため、一般の皮革や他のコードバンと比べて希少価値が高いのが特徴。 またあまり知られていませんが、コーティング剤などを一切使用していないため、馬の臀部の汗腺の穴(ピンホール)がそのまま表面に現れているなど、革の自然な風合いが残っているところもシェルコードバンの特徴と言えます。
シェルコードバンの魅力を引き出す、昔ながらの製法。
「革のダイヤモンド」とまで評されるほどの美しさは、昔ながらの手間のかかる製法によって引き出されています。 まずは原皮を1ヶ月ほどタンニン鞣しした後に、繊維密度の低い部分を削り、再び1ヶ月ほどタンニン鞣しをします。 その後、ホーウィン社が独自にブレンドしたオイルを一枚一枚手塗りし、革にオイルを均一に浸透させるために3ヶ月以上寝かせます。 オイルが十分に浸透し乾燥した原皮から、シェルコードバン層だけを削り出し、その後に本染め(染料は5回ほど重ね塗りされる)。 最後に「めのう」と呼ばれるツルツルなガラスで、シェルコードバンの繊維を寝かせる工程(グレージング)により、独特の艶を出す。 このように6ヶ月〜10ヶ月の時間をかけて丁寧に仕上げることで、しっとりと吸い付くような肌ざわり、柔軟性を兼ね備えた「シェルコードバン」が完成するのです。
他の革にはない、シェルコードバンならではの特徴と魅力とは…。
一般的な牛革は銀面(革の表面)を使用しますが、コードバンは馬の臀部の皮の内部にあるコードバン層から削り出した部分の床面(革の裏側)を使用します。 このコードバン層は繊維の密度が極めて高いため、伸びにくく型崩れしにくいという特徴があります。 さらにシェルコードバンは、折り曲げなどへの耐久性を高めるためにオイルを十分に浸透させているため、他のコードバンよりもしっとりした風合いが楽しめます。 シェルコードバンに使用するカラー剤はアニリン染料のみ(顔料は一切使用しない)。そのため動物由来の特徴そのままに傷や色ムラなどがありますが、使い込むうちに革繊維が寝て、なめらかな手触りへと変化するのが特徴です。 また、使用による摩擦や紫外線などにより独特の光沢や艶が出てくるなど、使い方によってエイジングが変わるのは、シェルコードバンならではの魅力です。
シェルコードバンの特徴を維持する、最適なメンテナンス方法。
シェルコードバンは最初からオイルをたっぷりと含んでいるので、購入してしばらくはオイルケアは不要。柔らかいクロスを使った乾拭きのみで問題ありません。 最初からクリームやワックスを使用すると、表面に曇りが出てしまう恐れがあるのでご注意ください。 使い込んでいくうちに艶が落ちてきたら、馬毛ブラシなどで埃を落とした後に、柔らかい布にワックスやクリームをつけて、革の表面全体に伸ばすように薄く塗れば大丈夫です。 またシェルコードバンの表面がカサつき始めたら、革の栄養補給を目的とした無色のクリームのみを使いましょう(汚れ落としの成分を含む製品の使用は厳禁)。 傷が付いた場合は、浅いものであれば指の腹でこすれば目立たなくなります。深い傷であれば、専用のクリームを薄く塗り込むと目立ちにくくなります。
ご留意事項
・革の表面に革の製造工程でついた、小さい傷やこすれが付いていることがあります。
・革本来のシワ(トラ)があることがありますが、天然の証で、不良品ではありません。
・シェルコードバンの個性でもある、色むらや艶の有り無しの個体差があります。
・革の表面に、ピンホールと呼ばれる、小さな穴が見受けられますが、こちらは毛穴の跡で不良品ではありません。
・革のロット違いによる色むらがあります。