ブライドルレザーのエイジング(経年変化)のメカニズムと、魅力について解説します。
革の「エイジング」とは、時間経過とともに革の色味や質感に起こる「経年変化」のことを指します。
革表面の色味が深く変色したり艶が出て、硬い革が柔らかくなるなどの質の変化を伴います。
またエイジング(経年変化)は、革の種類や製品の使い方によって異なります。
ここでは、ブライドルレザーのエイジング(経年変化)のメカニズムや、その特徴・魅力についてご紹介したいと思います。
革本来の色味になるブライドルレザーのエイジング(経年変化)。
ブライドルレザーの特徴的なエイジング(経年変化)の一つに、色の変化があります。
ブライドルレザーの伝統製法では、「ブライドルグリース」が染み込みやすくなるよう革の表面(銀面)を削り、その後、何度も「ブライドルグリース」を塗り込み繊維を引き締めます。雨水などの水分が革に浸透するのを防ぐと同時に、革の中に含まれる水分を保持することで強度を保つためです(ワックス成分を染み込ませる期間は5ヶ月以上かかる場合も)。
このように、革の加工時に塗り込まれた「ブライドルグリース」成分が凝固して浮き出た白い粉が「ブルーム」。長く使い続けるとブルームが革に馴染んで落ちていき、重厚感がありつつも上品なブライドルレザー本来の革の色味を楽しむことが出来ます。
使い込むほど艶が出るブライドルレザーのエイジング(経年変化)。
製造工程では、原皮を腐敗させずに革にする「鞣す」工程が必要不可欠です。
ブライドルレザーの鞣しでは、主に植物性由来のタンニンを使用します。タンニンはワインなどに含まれているポリフェノールの一種で、熟成したワインほど色が渋くなるのもこのタンニンが作用しているため。
同様にタンニンで鞣したブライドルレザーも、使い込むことで酸化し、色に深みが増して艶が出てきます。
タンニンは非常に高価な上に、鞣しに時間を必要としますが、タンニンで鞣されたブライドルレザーは、使い込むほど革に艶が出るエイジング(経年変化)を楽しむことができます。
ブライドルレザーを美しくエイジング(経年変化)させる使い方や手入れ方法。
ブライドルレザーの艶と潤いを保ち、色に深みをだすためには、日々の使い方やお手入れが重要になります。
まずブライドルレザーに限らず革製品をきれいにエイジング(経年変化)させるために大切なことは、毎日手で触れること。手の脂が革表面になじむことで保革をすることが可能になります。ただしこれだけでは十分とは言えないので、革表面が乾いてきたと感じたら、クリームなどを使った栄養補給をしましょう。
マメにブラッシングすることも重要です。埃が革の油分を吸い取ってしまい革の乾燥につながります。この状態が長く続くとひび割れの原因になりますので、使い終わったらブラッシングをして埃を落としましょう。
さらに、ブライドルレザーの財布などをズボンの後ろポケットに入れたまま座ると、部分的に体重がかかり変形してしまいます。とくに夏場は革に汗が染み込み劣化を早める原因になるのでご注意ください。
万双のブライドルレザー製品のエイジング(経年変化)について。
世に出回っているブライドルレザーの中には、ツルっとした質感を出すために顔料仕上げを施したものもありますが、その場合、使っているうちに顔料が割れてきてしまうという問題をはらんでいます。
そこで万双では、顔料を使用せず手間のかかる染料仕上げを採用。これにより使い込んでも表面の割れが発生せず、さらにじっくり緩やかにエイジングをしていくという特徴があります。
なお使い始めの際に革表面にブルームが浮き出ていますが、人の手の体温や擦れなどで自然となくなっていきます。その際に色むらが生じますが、自然に馴染むのを待つか、気になるようでしたらブラッシングで綺麗に落とすことも可能です。