コードバンの雨対策の方法と理由について詳しくご紹介します。
「コードバン=水に弱い」というのはコードバン好きの間で定説であり、放置しておくと「水ぶくれ」のような痕ができるのは事実です。
しかし雨対策や、濡れてしまった際の対処方法が無いわけではありません。
ここではコードバンの雨対策や、水に濡れてしまっても痕を目立たなくする方法などについてご紹介いたします。
これからコードバン製品を購入予定の方はもちろん、すでにお使いの方もぜひ参考にしてみてください。
雨対策の前に「コードバン=水に弱い」理由を知る。
馬の臀部の表皮の下には、繊維が非常に密に詰まったコラーゲンの層があります。それを削り出し、鞣しや染色の工程を経て、最後に表面を磨き上げたものがコードバンになります。
牛革は繊維が網目状に絡まっているのですが、コードバンは歯ブラシのように繊維の向きが垂直。そのため水滴が表面についてしまうと、素早く浸透してしまいます。
コードバンは、この縦に並んだ繊維の表面を瑪瑙(メノウ)などでならすように磨き上げることによって完成しますが、水分を含んでしまうと、ならされた繊維が元の形に戻ろうとしてしまうため、水ぶくれのように膨らみます。
これが、コードバンが雨などの水に濡れると「水ぶくれ」ができるメカニズムです。
コードバンの雨対策はすばやい応急処置が重要。
コードバンは、水に濡れた状態を放置しておくと「水ぶくれ」になりやすく、またコードバンの色艶が失われることもあるので、雨などに濡れたらすぐに応急処置をしましょう。
雨に濡れたら、すぐに水滴を拭き取るのが重要です。柔らかい布やティッシュペーパーなどを軽く当てるようにして拭き取りましょう。なお染料仕上げのコードバンの場合、強く擦ると色落ちしますので、ご注意ください。
水滴を拭き取ったら自然乾燥をさせましょう。なるべく早く乾かすことが重要なので扇風機を使って乾かしてもOKです。
ただしドライヤーの熱風を使うとコードバンが変色・変形する可能性があるので、なるべく使用は避けてください。
完全に乾いたら、表面についた汚れや埃をとるために優しくブラッシングしてください。さらに光沢が戻らない場合は、クリームを少量使って毛羽立ちなどを押さえるように磨いてください。
シューズカバーや防水スプレーを使ったコードバンの雨対策について。
コードバンの小物の場合はバッグに入れて持ち歩くことができますが、靴の場合はそうはいきません。雨に降られてしまったら濡れるのは不可避。
それでも「コードバンの靴を雨で濡らしたくない」という方は、高弾力のシリコン素材を使ったシューズカバーを使用してみてください。
畳むと小さくなり、シリコンなので皺にならないため持ち歩きが容易で、さらに広げた際の形状が安定しています。使用後は洗って何度も使えるのもポイントです。
またコードバン靴の雨対策として防水スプレーを使用する方法もありますが、均等に吹き付けるのが難しいため色ムラの原因になりやすく、またコードバンならではの光沢が損なわれる可能性があるので、ご注意ください。
万双が考える「コードバンの雨対策」。
コードバンの水ぶくれは確かに気になります。雨対策に神経質になるお気持ちもよくわかります。
しかし「手間がかかる革小物ほど愛おしくなる」のも、また事実です。
弊社が使用しているコードバンは染料染めにより自然な風合いを生かしているので、顔料コーティングを施したコードバンに比べると、傷や水ぶくれが目立ちやすいのが正直なところ。しかし時間と手間をかけて傷や水ぶくれが馴染むようにするのも、コードバン製品の楽しみ方の一つです。
水で濡れてしまっても、水分をすぐに拭き取って乾かしマメにブラッシングを続けていれば、水ぶくれは時間の経過とともに目立たなくなります。
さらに弊社オリジナルの「エイジングクリーム」で起き上がった毛を寝かしつけるように磨けば、コードバン特有の艶や光沢が蘇ります。
コードバンの雨対策はたしかに必要ですが、あまり神経質になりすぎず、濡れてしまった場合は、時間をかけて水ぶくれを馴染ませるようにお手入れしていただければと思います。